読書ガイド

『銀河鉄道の夜』みたいな小説おすすめ7選

星祭りの夜の列車、隣の席のカムパネルラ、「ほんとうのさいわい」。あの読後の静かな切なさを、もう一度。

発行: Simran Mehta 更新日

『リミナル・フィクション ― 世界のはざまの列車』(シムラン・メータ)の表紙

このサイトの小説 · 第1作 日本語版

リミナル・フィクション ― 世界のはざまの列車

日本語版

『銀河鉄道の夜』のような夜の列車の旅と、記憶と再会をめぐる切ない物語が読みたい人には、このサイトの小説の日本語版『リミナル・フィクション ― 世界のはざまの列車』を。目が覚めると見知らぬ列車の中、ポケットには「行き先:不明」の片道切符が一枚。自分が誰なのかも思い出せない青年エリオが、浮かぶ庭、記憶が棚に並ぶ部屋、本がささやく図書室と、少しずつ現実から外れていく車両を進んでいく幻想ミステリーです。賢治の童話よりずっと現代的で、謎解きの要素もあります。日本語版はAmazon.co.jpのKindleで読めます(Kindle Unlimited対象)。

結論

『銀河鉄道の夜』みたいな小説を一冊だけ選ぶなら、サン=テグジュペリ『星の王子さま』です。星をめぐる旅、大切な相手との別れ、やさしい言葉で投げかけられる大きな問い。短く、何度でも読み返せるところまで賢治の童話とよく似ています。大人向けの長い幻想なら村上春樹『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』やカズオ・イシグロ『忘れられた巨人』、童話のかたちをした問いかけならエンデの『モモ』と『はてしない物語』を。

『銀河鉄道の夜』の魅力とは

星祭りの夜、ジョバンニを乗せて銀河を走る列車。窓の外には白鳥の停車場、鳥を捕る人、そして隣にはカムパネルラ。宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を読み終えたあと、胸の奥に残るあの静かな切なさを、もう一度味わいたいと思ったことはありませんか。

「似た作品」を探す前に、この物語のどこに惹かれたのかを整理しておくと、次の一冊が選びやすくなります。

  • 幻想的な旅の情景:現実にはありえない、でもどこか懐かしい風景。
  • 別れの予感:一緒にいる時間が、いつか終わると感じさせる切なさ。
  • 「ほんとうのさいわい」という問い:生きる意味を、やさしい言葉で問いかけてくる。
  • やさしい日本語:子どもにも読めるのに、大人ほど深く刺さる。

下の7冊は、この四つのどれかを強くもっている本です。すべて日本語で手に入る版を、出版社・訳者・刊行年とあわせて紹介します。ネタバレはありません。

『銀河鉄道の夜』みたいな小説 7選

  1. 星の王子さま サン=テグジュペリ

    原題: Le Petit Prince

    新潮社(新潮文庫) · 2006 · 訳: 河野万里子

    サハラ砂漠に不時着した飛行士が、小さな星からやって来た王子と出会う。王子が語るのは、自分の星に残してきた一輪のバラのこと、そして地球に来るまでに立ち寄った星々の奇妙な住人たちのこと。星をめぐる旅、かけがえのない相手との別れ、そして狐が教える「いちばんたいせつなことは、目に見えない」という言葉。子ども向けの体裁なのに、大人になってから読み返すほど痛い、という点で『銀河鉄道の夜』といちばん近い一冊です。新潮文庫版は160ページほどで、一晩で読めます。

    向かない人:

    寓話やたとえ話の多い語り口が苦手な人。筋の面白さで引っぱる物語ではなく、言葉を味わう本です。

    確認した情報源: 新潮社:星の王子さま(新潮文庫、河野万里子訳、2006年)

  2. 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 村上春樹

    新潮社(新潮文庫) · 1985

    高い壁に囲まれ、外の世界とのつながりを断たれた静かな街「世界の終り」。そこで一角獣の頭骨から古い夢を読む「僕」の章と、現代の東京で、老科学者に意識の核へある思考回路を組み込まれた「私」が追われる冒険の章が、交互に語られます。片方は凍ったように静かな幻想、もう片方は騒がしいハードボイルド。二つがどうつながるのかを知りたくて読み進めるうちに、「心」と「記憶」をめぐる問いに行き着きます。賢治の透明な寂しさを、大人の長編で味わいたい人に。

    向かない人:

    短い本を探している人。文庫で上下二巻あり、交互に進む二つの物語に慣れるまで少し時間がかかります。

    確認した情報源: 新潮社:世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〔上〕(新潮文庫)

  3. モモ ミヒャエル・エンデ

    原題: Momo

    岩波書店(岩波少年文庫) · 1976 · 訳: 大島かおり

    町はずれの円形劇場の廃墟に住みついた少女モモは、人の話をただじっと聞くことができる。ところが町に「灰色の男たち」が現れ、人々に時間を節約させ、その時間を盗んでいく。忙しくなった大人たちは笑わなくなり、子どもたちは遊び方を忘れていく。童話のかたちをとりながら、「時間とは何か」「生きているとはどういうことか」を正面から問う物語で、やさしいのに深いという賢治の童話の読み味にいちばん近い海外作品です。1976年の単行本以来、大島かおり訳で読み継がれています。

    向かない人:

    寓意がはっきりした物語が苦手な人。灰色の男たちが何を表しているかは、読めばすぐに分かります。

    確認した情報源: 国立国会図書館サーチ:モモ(岩波書店、1976年、大島かおり訳), 国立国会図書館サーチ:岩波少年文庫版(2005年)

  4. かがみの孤城 辻村深月

    ポプラ社 · 2017

    学校に行けなくなった中学生のこころ。ある日、部屋の鏡が光り、くぐり抜けた先には城のような建物があった。そこには、こころを含めて七人の中学生が集められていて、城の中に隠された鍵を探せば願いがひとつ叶うという。なぜこの七人なのか、という謎を追いながら、少しずつ心が近づいていく物語です。異世界の入り口と、限られた時間の中で生まれる友情、そして最後に明かされる仕掛け。『銀河鉄道の夜』の「一緒にいられる時間には終わりがある」という切なさを、ミステリーの形で味わえます。2018年本屋大賞受賞作。

    向かない人:

    学校でのつらい体験の描写が苦しい人。いじめや不登校が物語の中心にあります。

    確認した情報源: 国立国会図書館サーチ:かがみの孤城(ポプラ社、2017年), 公募ガイド:2018年本屋大賞受賞

予告編(30秒)

  1. ぶらんこ乗り いしいしんじ

    新潮社(新潮文庫) · 2004

    ぶらんこが上手で、指を鳴らすのが得意だった弟。その弟のことを、姉が思い出しながら語っていく物語です。弟が書き残したお話や、家族に起こる出来事。童話のように平易な文章で書かれているのに、読み進めるほど、ふっと胸の奥が冷たくなる瞬間があります。いしいしんじの最初の長編で、宮沢賢治の世界が好きな人にすすめられることの多い作家です。説明しすぎない、余白の多い語りが好きな人に。

    向かない人:

    はっきりした筋や謎解きを求める人。出来事よりも、語りの声と余韻を味わう本です。

    確認した情報源: 新潮社:ぶらんこ乗り(新潮文庫、2004年)

  2. 忘れられた巨人 カズオ・イシグロ

    原題: The Buried Giant

    早川書房 · 2015 · 訳: 土屋政雄

    アーサー王が去ったあとのブリテン島。霧に覆われたこの土地では、人々が過去の出来事をすぐに忘れてしまう。老夫婦のアクセルとベアトリスは、遠い村で暮らしているはずの息子に会うため、長年住んだ村をあとにします。道中で出会う騎士や戦士、鬼や竜の噂。旅の物語でありながら、ほんとうの主題は「忘れることは救いなのか」という問いです。二人が互いを呼ぶやさしい声と、その下に沈んでいるものの気配が、読み終えたあとも長く残ります。『わたしを離さないで』から十年ぶりの長編。

    向かない人:

    テンポのよい冒険ファンタジーを期待する人。旅は遅く、霧のように曖昧で、答えも簡単には出ません。

    確認した情報源: 国立国会図書館サーチ:忘れられた巨人(早川書房、2015年、土屋政雄訳), 紀伊國屋書店:ハヤカワepi文庫版

  3. はてしない物語 ミヒャエル・エンデ

    原題: Die unendliche Geschichte

    岩波書店 · 1982 · 訳: 上田真而子・佐藤真理子

    いじめられっ子の少年バスチアンは、古本屋で見つけた一冊の本を持ち出し、学校の屋根裏部屋で読みはじめる。その本の中の国「ファンタージエン」は、「虚無」に呑まれて消えかけていた。読むこと自体が旅になり、やがて読者である少年が物語の中へ入り込んでいく構造は、何度読んでも驚かされます。岩波書店の単行本は、現実の場面と物語の中の場面が二色の文字で刷り分けられていて、本そのものが仕掛けになっています。『モモ』よりずっと長く壮大で、後半は「望み」と「自分を失うこと」をめぐる、大人にこそ刺さる物語です。

    向かない人:

    短い本を探している人。単行本で600ページ近くあり、後半はとくに長い旅が続きます。

    確認した情報源: 紀伊國屋書店:はてしない物語(岩波書店、1982年), 国立国会図書館サーチ:上田真而子・佐藤真理子訳

どれから読む? タイプ別早見表

読みたい気分おすすめ
短く、何度も読み返したい『星の王子さま』『ぶらんこ乗り』
幻想と現実を行き来したい『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』
童話のような問いかけ『モモ』『はてしない物語』
謎と余韻を楽しみたい『かがみの孤城』
旅と「忘れること」の切なさ『忘れられた巨人』

「列車の物語」はなぜ切ないのか

列車は、乗った瞬間から「降りる時」が決まっている乗り物です。だからこそ、車内で過ごす時間は特別になり、隣に座る人との時間はかけがえのないものになります。窓の外を流れる景色は、過ぎていく人生そのもの。『銀河鉄道の夜』が今も読み継がれるのは、誰もが心のどこかで、この「いつか降りる」感覚を知っているからかもしれません。

どこにも着かない通路や乗り物の感覚が好きな人はリミナルスペースを感じる小説を、記憶と忘却の物語をもっと読みたい人は記憶喪失の小説おすすめを、夢と現実のあわいを描いた作品を広く知りたい人は幻想小説おすすめもどうぞ。

よくある質問

読者からよく聞かれること

『銀河鉄道の夜』に似た小説で、まず読むなら?

『星の王子さま』です。星をめぐる旅と大切な相手との別れという点で、『銀河鉄道の夜』とよく一緒に挙げられます。短いので、読書が久しぶりの人にも向いています。

大人向けで『銀河鉄道の夜』のような小説は?

『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』と『忘れられた巨人』は、幻想的な旅と記憶をテーマにした大人向けの長編です。

列車が舞台の幻想的な小説はありますか?

『銀河鉄道の夜』そのものが代表格です。終わりのない通路や乗り物のような「あいだの場所」を描いた小説は、リミナルスペースを感じる小説のページにまとめています。

短くて読みやすいものは?

『星の王子さま』と『ぶらんこ乗り』は比較的短く、どちらも文庫一冊で読めます。

もうひとつの予告編(30秒)